2007/11/08

ギフテッド

 日本ではマスコミを始め、ギフテッドが「高偏差値のエリート」と誤解されており、「英才児を産む」「英才児になるように育てる」という表現がまかり通っている。関連書籍もお受験や学力がらみの早期教育のものが多く、「〇〇脳」「〇才までに導入」「○才までに習得」といったキーワードが並ぶ。これは教育心理学や発達心理学から見て、次のような点で間違っている。

* ギフテッド (gifted)は、贈り物を意味するギフト (gift) が語源であることからわかるように、神あるいは天から与えられた資質、つまり生まれつきの神経系素質である。精神的に特異であるという点では、ギフテッドも特別支援教育の範疇にある。「ギフテッドの才能を伸ばす」という言い方はできるが、「こうすればギフテッドになる」とは言わない。

* 成長期に特別な支援が必要であるため英才「児」と呼ばれるが、ギフテッドは一生を通して見られる傾向である。「大人になればただの人」と言われる神童とは異なる。就学前教育や早期就学だけではフォローアップが不十分である。

* ギフテッド学級と呼ばれていても、選考の際に学業成績に重きを置く場合は、ギフテッドのほかに先取りや詰め込み教育で高い学力を身に付けたハイ・アチーバーが混ざる。ハイ・アチーバー (High achiever 高達成児)は、ハイリー・ケイパブル (Highly Capable 高能力) ともいい、これが事実上 日本の多くの「英才児」に当たる。

* ギフテッドは学校の成績という尺度に限らず、芸術性やリーダーシップにおいて秀でたこと、または秀でる可能性を持つことを指す。優秀な成績や模範的な学習態度を持っているとは限らない。学業不振であったり、ADHDの診断を受けて特別支援教育クラスに入っていることもある[1]。

* 早期教育で他人よりも早く多くマスターする先取り学習によってギフテッドになるのではない。ギフテッドは常に知的刺激を渇望し、興味ある分野を自分の好む学習方法で深く掘り下げて探求する傾向にあり、それが結果的に学年より先のレベルに到達することが多い。教育熱心な保護者主導で幼児教室に通わせたり、業者の教材を子どもに買い与える早期教育とは一線を画する。

* 「賢い子で良かった」と手放しで喜んではいられない。ギフテッドであるが故の精神的葛藤や苦悩、心理面や行動面の問題がある。

        中略

孤立

ギフテッドはOE(前述)に起因する少し変わった行動をとる、同世代の子ども達と精神年齢や興味が異なり話が合わないといった理由で、気の合う友達がみつからなかったり、他の子どもから疎外されることもある。外界からの刺激を嫌うためや、人生をより真摯に受け止めるがゆえに内向性を持ち頻繁に内省するために、ギフテッド自身が一人でいることを選ぶ場合もある。

特にギフテッド仲間の社会的ネットワークを持たない者にとって、孤立は一番の問題である。他人に好かれ、認められようと、ギフテッドの子どもはしばしば自分の能力を隠そうとする。アンダー・アチーバー(下記参照)となったり、家族や信頼できる人といる時に使う高尚な言葉とは異なり、同級生といる時は簡単な言葉を使うようにするといった、本当の自分とは異なる姿を演じる[11]。これはギフテッドの女性により多く見られる傾向である。

孤立は、必ずしもギフテッドであることが原因ではなく、社会のギフテッドに対する考えにも起因する。社会において人は「ノーマル」でなければならないという多大なプレッシャーがある。ギフテッドやタレンテッドの人間は変わり者という烙印を押されたり[12]、 いじめの対象になったり、自己嫌悪や自己卑下する可能性もある。孤立問題を解決するために、ギフテッド教育の専門家は共通した興味や能力に基づいたギフテッド達でグループを作ることを薦めている。グループに参加する時期が早いほど、孤立を避けられる[13]。

欧米にはギフテッド教育を施す私立校がある。アメリカ合衆国の場合、公立や進学校を含めた他の私立からギフテッド専門の私立校へ転校する子どもも多い。専門私立校は公立のギフテッド・プログラムとは異なる選考基準を設けるところもある。卒業生がアイビー・リーグなどの名門大学に進む学校も多いが、ギフテッド専門校は進学校ではなく、あくまでもギフテッドのニーズにきめ細かく応える学校である。ギフテッドの子どもが本来の自分のままでいながらにその才能を最大限に咲かせられることを最優先にしている。ギフテッド専門校に通ってようやく話が通じる仲良しの友達ができた、「普通の人」を演じる必要がなくなった、というような広義の意味でのクオリティ・オブ・ライフ(人生の質)の向上に力を入れる。一般的にギフテッド専門私立校は授業料が高く、ごく一部の恵まれた子どもしか通うことができない。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%95%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89

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