2011/08/12

”【東京】玄葉光一郎国家戦略担当相(民主党政調会長)はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューに応じ、小型炉など次世代原子炉がエネルギー戦略で一定の役割を果たすことになるかもしれないと示唆した。福島原発危機で大きな痛手を負った日本では国民の多くが脱原発に目を向けている。

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Associated Press
玄葉光一郎国家戦略担当相
 エネルギー政策を取りまとめる役割を担う玄葉担当相は、福島の事故を受けて国民には原発への反感があるものの、日本の産業を苦しめる電力不足解消の対策として、小型炉活用の可能性を排除すべきではないとの見解を示した。

 玄葉氏は「(エネルギーシステムが)集権型から分散型になることに小型の新型炉が矛盾するかと言えば、そうでもない」と述べた。

 菅直人首相は、脱原発を表明し、総発電量に占める原子力の割合を2030年までに50%超に高めるという従来のエネルギー戦略を破棄した。しかし、脱原発に対する世論の支持が上昇する一方で、日本は石炭や天然ガス、石油など、電気需要を満たす資源をほとんど持たず、また代替エネルギーでは需要を賄いきれない。その上、菅首相は早ければ月内にも退陣する見通しであり、首相が目標とする脱原発の行方は不透明だ。そんな中で玄葉氏は、小型原子炉に着目する姿勢を明らかにした。

 原発反対の声が高まる中でも、政府は引き続き原発における選択肢を模索している。日本の原子力発電業界を監督する海江田万里経済産業相の諮問機関では先月、新型炉の技術開発を中止することは「もったいない」との意見が表明された。

 大阪大学の宮崎憲次名誉教授は小型原子炉について、コスト的には不利であるものの、将来のエネルギー源の一つとして検討する価値はあると指摘している。原子炉の建設費用は炉の大きさにあまり関係ないとされ、小型炉は発電単価でみると割高になりがちだ。

 小型炉などの新型炉には、日本の原子炉メーカー全て(日立製作所と三菱重工業、東芝)が力を入れている。しかし、小型炉はまだ開発段階であり、東芝によると、実用化までには5~10年近くかかる見通しである。

 玄葉氏は、中小規模の発電所が相互接続したネットワークによって電力が供給される「分散型電源」を提唱する。これは、大都市への電力を供給するために遠隔の農村部に大規模な原発を建設する現在の集権型のシステムとは対照的な考え方だ。

 福島県選出の同氏は、3月の事故以降、地元の不満を直接耳にしている。同氏の小型炉への関心は、地元への真の配慮に欠けた従来の原子力政策を変えることを目指したものだといえる。

 東日本大震災が起きた3月11日以来、定期点検の完了した、少なくとも5基の原子炉が再稼働を見合わせている。地元が反対しているためだ。

 玄葉氏は「新しい原発ほど安全なのも事実。(古い原子炉を)リプレース(建て替え)した方が安全との議論もある」と語った。

 福島第1原発で部分的にメルトダウン(炉心溶融)した3基の原子炉は30年以上前に建設されたものであり、1979年の米スリーマイル島原発事故などからの教訓が生かされる前に開発された。

 福島原発事故が起こる前、政府は2030年前後に原子炉の建て替え需要が伸びると予想、大規模原子炉の建設をその対応策とみなす一方、小型原子炉は主に海外市場向けと考えてきた。しかし、原子力を担当する経済産業省の担当者は、需要があればメーカーは国内市場も視野に入れるだろうと指摘する。

 玄葉氏は総発電量に占める原発の割合が今後どのように変化するか明言しなかった。しかし、議論の基点として頻繁に使われる2007年の26%という比率をかなり下回る可能性が高いと指摘した。そして、公共料金が上昇し、ライフスタイルが変わるような結果になるとしても、国民はエネルギー政策の大幅な変更を受け入れるだろうと語った。

 ドイツでは、公益事業体に対して再生可能エネルギーから供給される電力を割高な価格で購入することを義務付ける電力買い取り制度が導入されているが、日本でも同じような制度が国会で協議されている。”