2008/03/12

"この数年、米国は住宅バブルに翻弄され、混乱はなお続いてはいる。しかしながら、その住宅金融制度が、「ストック型住社会」の豊かさに貢献していることは間違いない。欧州は、さらにそうである。

 翻って、日本の現状はどうか。政府は供給数を優先し、私たちは安普請を使い捨てにし、未だ戦後住宅政策から脱却できずにいる。すぐに壊してしまうから、住宅流通における中古物件の比率は、1割に過ぎない。戦後、どれだけの膨大な資金を投下し、社会資本を無駄にしてきたのだろう。 

 新築から10年程しか過ぎていないのに、リフォーム資金の融資を申し込むと、上物(住宅)の価値はゼロと判定され、土地の担保能力に頼るしかない。私たちは住宅ローン、リフォームローンの奴隷である。日本の金融機関は、欧米のように新築にしろ中古にしろ、現物査定などしない。住宅価格の変動情報を提供するシステムも皆無である。――私たちは、こうしたことをごく当たり前のことと思い込んでいて、疑問に感じない。これこそが、世界第二位の経済大国に住みながら、豊かさを実感できない大きな原因である。

 ようやく、今国会に「二百年住宅法案」(通称)が提出された。日本の住の意識を変える試みである。優遇税制など長期優良住宅の促進策がさまざまに盛り込まれているが、国土交通省が所轄であることもあって、住宅金融の視点が欠けている。新住宅金融モデルの構築をインフラ整備の核に据える必要があろう。住宅の平均寿命は米国55年、英国75年に比して、日本はわずか30年に過ぎない。"

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