2008/06/17

” アマゾンは一般にはWeb上の書店かオンラインショップと考えられているかもしれない。ユーザーのプロファイルを抑えたマーケティングや、世界中に張り巡らせた効率的なロジスティクスこそが彼らのコア・コンピテンスだと見る人もいるだろう。しかし、アマゾンが次々と発表している「Amazon Web Services」(AWS)が示すのは、アンドリーセン氏がいうレベル3プラットフォームを提供できる数少ない企業として、アマゾンが他社をリードしているという事実だ。

 米アマゾンCTOのワーナー・ヴォーゲルス(Werner Vogels)氏は自身のブログのなかで、同社の分散システム「Dyanamo」の技術的概要を明かしている。公開された文書によれば、アマゾンは年末のプレゼントシーズンのピーク時には数千万人の顧客を数万台のサーバでさばいているという。常時、数百万セッションを維持し、たった1日で300万ユーザーが何かを購入する。1つのWebページを表示するのに平均して150程度の関連サービスがSOAベースの分散システム上で呼ばれるが、一定時間以内にページを表示するために、個々のサービスは数百ミリ秒以内にレスポンスを返す仕様になっている。

 この巨大で実用的なシステムを実現するために、アマゾンは長年考察と技術開発投資を続けてきた。同社のストレージサービス「Amazon S3」のベースともなっているというDynamoでは、従来のRDBMSで常識だった「データの完全な一貫性」を保証することよりも「いつでも必ずデータを書き込める」というレスポンスを優先したアプローチを採用している。システム全体でデータの一貫性を完全に保証しようとすると、ある一定以上の規模やパーティションで分けられたネットワークにはスケールしなくなる。代わりに一貫性を少し犠牲にすることで、Dynamoでは可用性を大幅に上げているという。これは、いつでもカートに商品を入れられるようにという同社サービスの特性から来る要請というが、地球規模のクラウド・コンピューティングでは今後広く使われていく手法なのかもしれない。

 ヴォーゲルス氏はDynamoの特徴を「zero-hop DHT」(ホップ数ゼロの分散ハッシュテーブル)とも述べている。DynamoではFreenetやGnutellaのような古いP2Pネットワークと異なり、あらかじめ参加しているピアが分かっている「構造化されたP2P」を使っている。すべてのピアは完全なハッシュデータを持っていて、必要なサービスやデータを提供するピアに対して、他のピアを経由することなくダイレクトにアクセスできる。そのため、実行速度はネットワーク規模に無関係に一定以下に抑えられるのだという。

 こうした高度なアルゴリズムやアイデアは、アカデミズムの世界でも多く議論されているが、実際に稼働しているシステムを持つのがアマゾンの強みだろう。”
http://www.atmarkit.co.jp/news/analysis/200711/26/platform.html

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