2008/06/01

貸自転車2000万人利用


”ほおをなでる薫風が気持ちいい。パリで人気の公共貸自転車「ベリブ」で、セーヌ河畔を巡った。

 パリ市が昨年7月に導入した乗り捨て型の貸自転車。市内への自動車の流入を減らすのが主な目的だが、ガソリン消費を抑えることで温室効果ガスの排出が少ない「低炭素社会」作りを進めるねらいもある。

 パリ市によると、現在約2万台のベリブがあり、4月までの9か月間でのべ2000万人が利用した。市内約1500か所、300メートル間隔で設置されたターミナルで24時間借りることができ、どのターミナルに返却してもいい。今後、パリ郊外で300か所4500台を拡張する予定だ。

 パリ西部16区を歩いていて見つけたターミナルには約20台のベリブが並んでいた。前かご付きのいわゆる「ママチャリ」タイプ。灰色の車体は約22キロあり、頑丈に出来ている。機械の案内に従い、1ユーロ(約162円)の1日券を購入した。支払いは、クレジットカードのみだ。乗りたいベリブのスタンド番号を押すとロックが解除された。

 そこへベリブに乗った男性が現れた。国営ラジオ局「RFI」に勤めるダニエル・バロットさん(32)。「通勤に毎日使っている。地下鉄よりいい。自分の自転車もあるけど、これなら駐輪場所や盗難の心配がない」。朝の住宅街で奪い合いになったり、丘の上のターミナルには自転車が少なく、トラックで運びこむことになったりするが、人気は上々という。

 セーヌ川沿いを北東へ走った。車道と歩道の間に自転車道があり、すいすい走れる。歩道を走るのは禁止で、自転車道のない場所では車やバイクと同じルールに従って車道を走らなくてはならない。エッフェル塔前を過ぎ、マリー・アントワネットが処刑されたコンコルド広場の石畳をがたがたと走り、シャンゼリゼ通りを突っ切り、凱旋門に。太ももが痛くなったが、気持ちいい。

 約1時間の走行中にベリブを交換した。1回30分を過ぎると追加料金が発生するからだ。1日券のほかにも7日券(5ユーロ)と年間パス(29ユーロ)もある。安くて便利。観光客にも人気の理由がわかった。

 乗り捨て型の貸自転車制度は、フランスではリヨン市が2005年に始めた。コペンハーゲン、ウィーン、バルセロナなども導入しており、欧州各地に広がっている。日本では、放置自転車や歩道を疾走する自転車がやり玉に挙がる。地域で自転車を共有する仕組みは、横浜市などで検討が始まったばかりだ。

 低炭素社会とは、すなわちライフスタイルの転換だ。健康で、爽快な通勤、通学――。日本でも普及してほしい。”
http://www.yomiuri.co.jp/feature/kankyo/20080522ft02.htm?from=nwla

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