2008/05/13


"「史上最高のインターフェース、ベスト5」から使いやすい設計を考える

現代のインターフェース開発者はユーザーのことを考えていない。少数の例外はあるが、六分儀や経線儀が登場するまで海で進路を決めるのはきわめて難しかったのと同様に、現代の小型機器はナビゲート不能だ。

それはなぜか? 現代のデバイスの内部の働きは、実世界でわれわれが扱うものとは関連がないため、マイクロチップと人間の脳の隔たりに橋を架けるには、場当たり的な抽象化が必要になるからだ。

おまけに、大半の機器ではユーザー・インターフェースは後回しにされることが多い。こうしたことから、操作部分のレイアウトのひどい使いにくさのせいでいたるところで嫌われている、米Motorola社の『RAZR』のような製品で手を打つことになる。

しかし、ずっと以前からこうだったわけではない。設計者たちはおそらく、もう少し過去に目を向ければ、多少は愛用しやすく、いらいらせずに使える製品を考え出せるかもしれない。


デジタルカメラとフィルムカメラ(もちろん私も持っている)の違いのなかで、好きな点を言うとすれば、昔のマニュアルカメラは非常に直観的なインターフェースであることだろう。

たしかに、ホワイトバランスやヒストグラム表示といった管理機能はないが、露出やピント合わせといった基本機能は、いったん覚えてしまえば、ほとんど意識せずに使うことができる。

シャッター速度、カメラレンズの絞り、フィルム感度という露出の3つの主要素を例にとろう。レンズの絞りを変更したければ、レンズの周りの絞りリングを回せばいい。シャッター速度も同じで、シャッターを囲むリング状のシャッタースピード・ダイヤルで調整する。それに、ISO感度はたいてい、フィルム 1本につき1回しか設定できないとはいえ、調整はやはりシンプルなダイヤルだ。

手が覚えているので、ファインダーを覗きながら操作できる。ダイヤル等の位置も、目的にぴったりの配置だ。

これに比べて、現在のデジタルカメラが採用している、複数のボタンのあるメニュー方式の煩雑さはどうだろう。キヤノンはそれでも、『PowerShot G9』に本物のISO感度設定ダイヤルを装備している。だが、なぜ絞りリングやシャッタースピード・ダイヤルがないのだろう? つけてくれればいいのに。

マウスを世に出したのが、米Xerox社、米Apple社、スタンフォード研究所(現SRI International)、米Walt Disney社のいずれであるかは別として、マウスがコンピューターを変えたのは確かだ。

メニュー方式でウィンドウを開くことを基本にするデスクトップの表示に、マウスがプラスされることで、誰でも簡単にコンピューターを利用できるようになった。

画面上に難解なコマンドラインを入力する代わりに、マウスでポイントし、クリックし、ドラッグすればいい。マウスは、コンピューターと人間の脳の間にある隔たりを見事に橋渡しするとともに、現在いたるところで見られ、乱用され続けている抽象化の先駆けにもなった。

マウスのおかげで、人々は、コンピューターによる変換の摩訶不思議な仕組みを知らなくても、複雑な機能を利用できるようになったのだ。


単純で精妙なフィードバックを返す、レコードプレーヤーの回転盤は今なお、完璧といってよいインターフェース設計の一例だ。

トーンアームがレコード盤の上を移動するので、部屋の反対側にいても、今聴いているのがレコードのどのあたりか、(LED表示を目を細めて見つめなくても)正確にわかる。曲の区切りは溝の間隔の広さでわかるし、音を消すときは単に針を上げるだけでいい。

DJたちにレコードの魅力は何かと尋ねたら、心地よい音やLP盤人気アルバムのアルバムアートではなく、指先で操作できる点だと答えるだろう。楽曲のラインナップやミキシング、スクラッチには正確な操作が要求される。その点、ボタンやスイッチで操作するよりも回転盤で操作するほうがはるかに簡単なのだ。"
http://wiredvision.jp/news/200805/2008051323.html

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