2007/10/29

ま っ た く 同 感 で あ る。

所得格差拡大論の誤謬
「教育」こそが世界的な2極化トレンドへの対抗策
2007年10月25日 木曜日 竹中 正治
論点  政治・経済  教育  格差 

 この報告書によると、日本の下位20%の1人当たり平均所得に対する上位20%の所得格差倍率は1994年時点で2.27倍であり、対象として挙げられた代表的な9カ国(米国、英国、フランス、日本、ロシア、ブラジル、中国、インド、メキシコ)の中では一番低い(格差が小さい)。また、この所得格差倍率が日本では1994年と2004年(2.28倍)の比較でほとんど変化していない。

 格差が縮小している国として、ロシア、ブラジル、メキシコがあるが、これらの国では日本に比べて元々途方もなく高かった所得格差倍率が縮小したに過ぎない。先進国で格差縮小を示したフランスでも日本より所得格差倍率は高い。



 さらにIMFのリポートは、過去20年間、国によってばらつきはあるものの、世界的に中・高所得の諸国を中心に所得格差拡大の傾向が見られると指摘し、その要因を分析している。同リポートは世界的な所得格差拡大の原因として、よく言われる「経済グローバル化(貿易・投資の自由化)が所得格差拡大の原因」という見解に懐疑的である。各国の対外開放度と所得格差の拡大の間には有意な関係が検証できないからだ。

 代わって同リポートが所得格差変化の検証可能な要因として注目するのは、IT(情報技術)を含む技術革新と教育機会の普及度合いである。ITを含む技術革新によって、低技能労働への需要は減少し、労賃が相対的に低下する。一方、高技能労働の職業への需要と報酬プレミアムが増加する結果、所得格差が拡大する。また、国民全体の教育へのアクセスが平等に向上すれば、国民全体の高技能職の比重が高まり、所得の向上と格差の縮小が同時に実現されると考えられる。


日本が強化すべき政策は「教育」、公共事業や補助金ではない

 私は「日本では格差が拡大していないので、何もしなくてよい」などと言っているわけではない。正反対である。

 もし、IMFのこの分析が正しいとするならば、日本がグローバルな経済競争と格差拡大トレンドに抗して行うべきことは、第1に若い世代の教育である。第2に技術革新の結果陳腐化した労働力の再訓練である。双方に対する財政と民間を挙げた投資が必要だ。

 日本国民全体の教育、技能水準を一層引き上げることで、世界的分業体系の中で日本が一層高付加価値部門にシフトすることが政策目標となる。そのためには財政支出も惜しむべきではなかろう。

 もっと具体的に言うと、教員の数を増やし、給料を引き上げてもよいではないか。その代わり、定期的にスクリーニングして不適格な教員には辞めてもらおう。グローバル化時代を担える人材を増やすべきならば、海外留学を志す若い世代10万人に年間200万円の支給を政府がしてもよいではないか。そのコストはわずか2000億円であり、F-15戦闘機8機分に過ぎない。

 一方、「地域間格差是正のために地方の公共事業の復活を」などと言うのは愚策の極みである。土地保有サラリーマンと化した兼業農家への財政的助成も愚策である。日本の政策的な選択は今まさに岐路に差しかかっているのだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20071024/138426/?P=3

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