2008/02/25

エビ・カニ殻由来の物質活用、宮崎大教授が金属吸着材開発

 ごみとして捨てられているエビやカニの殻に由来するキトサンを使って、不要になった携帯電話から金や銀を取り出す技術を、宮崎大工学部の馬場由成教授(59)(分離機能材料工学)が開発した。

 貴金属のほか、携帯電話やパソコンなど電子機器製造に欠かせず、世界で獲得競争が起きているレアメタルも容易に回収できるとあって、水産加工や精密機器メーカーなどの業界から注目を集めている。

 馬場教授によると、携帯電話などを酸で溶かして液状にしたものから金属を取り出す場合、ターゲットにする金属を引き寄せる性質を持つ原子を含ませた吸着材を使う。金なら硫黄原子、レアメタルのインジウムなら酸素原子を含ませる。

 一般に、使用済み電子機器から金属を回収するには、そういった原子を含む石油製品の合成樹脂が使われている。しかし、高価なのに反応速度が遅く、自然に分解しない欠点が目立っていた。

 馬場教授は合成樹脂に代わってキトサンを吸着材に生かすことを考案。様々な金属を引き寄せる性質を持つ窒素原子を含んでおり、金属吸着力が元々強いためだった。分子構造に少し手を入れるだけで簡単に吸着材に変えられるという。

 1994年、キトサン由来の吸着材を試作し学会で発表したところ、金属関係の会社から問い合わせが殺到。それを機に実用化を目指した。業界からは「金属を吸い取るスピードを上げてほしい」との要望が多かった。馬場教授と研究室の学生らは試行錯誤を重ね、吸着材の粒子に大きな穴をいくつも開ける技術を開発。吸着反応が起こりやすくすることに成功した。

 こうして改良した吸着材は従来の合成樹脂に比べ10~100倍の速さで金属を回収できる。最近開発したレアメタル用も従来品に比べ鉄など不純物の交じり具合が大幅に減ったという。

 馬場教授は、吸着材の製造方法に関する特許は取得済み。今後、実用化に向けて、大量の使用済み携帯電話から金やレアメタルを回収する実験を企業と共同で行う考え。

 携帯電話会社やメーカーなどが1年間で回収する使用済み携帯電話の量は約600トン。液晶パネルの透明電極に使われるインジウムの価格はこの5年間で8倍以上に高騰した。馬場教授は「1トンの鉱石から取れる金は5グラム程度。ですが、1トンの携帯電話からは60倍の300グラムの金が取れる。使用済み携帯電話は宝の山」と話している。

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