2009/05/20

モラル・パニック

”架空の例であるが次のようなものがモラルパニックである。社会に急速に携帯電話が普及したことにより、若者が携帯電話などに熱中することへの懸念が中高年の間で広がるとする。やがて「若年犯罪の増加や少女売春の増加は、携帯電話による人間関係や脳組織の劣化が原因だ」というようなセンセーショナルな説がメディアなどを通じて蔓延し、保護者の間に携帯電話に対する恐怖や社会不安が発生する。不安の高まりの結果、携帯電話の害悪を訴えて携帯電話を子供から取り上げたり、携帯電話販売を禁止したり携帯電話サイトを一律閉鎖したりする運動が社会全体に一気に広がる。この社会不安と運動はモラルパニックである。
これらのパニックは社会問題や俗流若者論などを取り上げるメディアの報道により火が付くことが一般的であるが、半自然発生的にモラル・パニックが起こることもある。集団狂気(マス・ヒステリア、mass hysteria)はモラル・パニックの要素となりうるが、集団狂気とモラル・パニックの違いは、モラル・パニックの場合は人々の持つ道徳性によって燃え上がり、普通「純粋な恐怖」というより「怒り」として表現されることである。社会的・文化的価値観を覆すものに対する静かな不安が広がっている時に、怒りを表現してパニック的運動を発生させる人々は「道徳事業家」(moral entrepreneurs、アメリカの社会学者ハワード・S・ベッカー Howard S. Beckerによる造語)と呼ばれる人々であり、その標的となるのは「フォーク・デビル」(folk devil、「民衆の悪魔」、社会からよそもの視される人々で、民話や噂話やメディアなどでさまざまな害悪の原因として非難される)と呼ばれる人々である。
モラル・パニックとは社会に緊張を起こすような論争の副産物でもあり、またモラル・パニックに対し疑問を呈することは社会の敵を擁護するものとしてタブー扱いされ、公の場での論争ができないこともある。

関心 - モラル・パニックが起こるには、まず世間に、疑わしい集団や文化は社会に対し悪影響がありそうだ、という認識があることが必要である。
敵意 - そうした集団や文化に対する敵意が高まり、「フォーク・デビル」へとされてゆく。「やつら」と「わたしたち」の明確な区分が形成される。
合意 - 国民的なものとはならないまでも、「これらの文化や集団は社会に対する現実的な脅威である」という認識が広まり受容される必要がある。このとき、「道徳事業家」たちの声が大きく、その一方で「フォーク・デビル」の声は社会に届かず組織化もされていないことがモラル・パニック発生には重要である。
不均衡 - 大衆は、非難されている集団が持つ実際の脅威に比べて不均衡な統計を与えられる。
揮発性 - モラル・パニックは揮発性が高く、激しく燃え上がるが終わる時も早く、大衆やメディアの関心は次の事件やニュースへ向かう。”
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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